「店長」飲食店で勤務していてまず最初に通る「登竜門」とでも言うべき役職。
「よ~し、俺も晴れて今月から店長に昇格だ!バリバリ働くぞ!」
不思議な事に飲食店ではこういったモチベーションの人は少ない。
やっとつかんだ職位。初めての出世。
しかし、待っているのは栄光に満ち溢れた表の顔とは裏腹に、過酷な現実だけなのです。
以下に私自身が体験した飲食店長の体験談をお話しします。同様の体験をされている方は転職も視野にいれる事をおすすめします。
(※店長を辞めたいと悩んでいる方へのページです。)
不条理な店長の責任
店長になった初日。打ち合わせで上の立場の人間から、
「今日から〇〇くんも☓☓店の店長だ。責任を持って取り組んでな!」
こんなお褒めの言葉を頂き、意気揚々と売り場へとくりだしていく。
責任感を持ってやっていかねば。
不安の入り交じる中、真面目なあなたはこんな感情を抱いて頑張るに違いありません。店長が抱く最初の責任感、「売上を上げる責任感」「バイトからの信頼を得るという責任感」「お客様から支持されるという責任感」という希望に胸ふくらませる反面、色々な責任が店長という立場になった瞬間から押し寄せてきます。
当然です。一国一城の主でもあるので、店長の采配で色々な事が左右するのですから。
しかしここである種の疑問もわきます。
湧き上がる疑問は、「何をするにも店長の責任」「店舗内で起こる事は全て店長の責任」「何か仕事を放り投げられている感が凄い」と、店長に就任した時の高揚感は一時のもので、すぐにそんなものは虚構だったと気付かされる。
気がつくと、自分でもコントロール出来得ない理不尽な事までも、店長責任としてなすりつけられている。
「なんでこんな事までやらなきゃいけないの?」
こんな感情に陥るのです。
人材がまるで足りてないのに、なんとかしろという本部
ありがちなのが、シフトの問題。
このご時世、人員が充足しているお店はほとんど無いといってもよい。
そんな中でも本部は無理難題をふっかけてくる。本部の無理難題
・適正人時シフトを組め!
・前年比売上105%を維持しろ!
人がいるいないに関わらずこんな暴言ともとれる姿勢をとってくるのです。
そもそも募集をかけても応募さえまともに来ない昨今では、スタッフの絶対数自体が足りてない。
その中で適正人時を組めと言われても、組みようがないのですね。
週末は万全の体制で8人シフトで臨もう!と考えても、バイトを含め総動員して絶対数が6人しかいなければ、適正な人時なんぞは組みようがない訳です。
更には、足りない2人時を本部に要請しても、すでに別の店舗からも要請がかかっており満足にヘルプにこれなかったりする。
こんな状況の中で、売上前年比105%を目指せ!なんて言われても無理に決っているのです。
著しいサービスの低下を前提か、席は空いているものの「予約席」とし客を通さないなどの対策を講じるしかないため、とてもじゃないが売上UPとかの次元ではないのですね。
こういった理不尽極まりない本部の要請も、店長を辞めたくなる大きな要因になります。
人材不足のため休日がないという理不尽さ
飲食店の店長で一番頭が痛いのがここでしょう。
辞めたくなる最大の要因とも言えます。
とにかく、とにかく、とにかく休みという休みがないのですね。
よく上層部の人間や外部のコンサルトさんが、
「おれが店長の時は、バイトを上手く育て、毎週2連休を取っていた。ガハハ。」
こんな事を発言している人をみかけます。
しかしこれ、時代錯誤も甚だしいです。
おそらくこういった発言をしている人が店長をやっていた時代は15~20年前の話しが大抵。
この時分は、まだ飲食業がブラックという認知もされていなかった為に人材も充実していた時。
辞めたら応募すれば、すぐに次のバイトが来るという恵まれた時代でもあったし、飲食社員を目指す人の絶対数も多かった。
なのでこういった人間が上層部にいる時はかなり厄介。
自分は時代性の為にたまたま上手くいっていただけなのに、同様の感覚で、今の現場に悪言をふりまく。
挙句の果てには、もし人手が足りないならその穴埋めは店舗責任者でもある店長が取るべき!こんな発言を講じてくるのですね。
今、あなたが店長で人手不足に悩まされ休日もままならないとしたら、それはあなた個人の全責任では断じてありませんよ。
充足した時代に甘んじ、飲食業をブラックに足らしめた経営陣にも十分その責任はあるのです。
- 人出不足の解決策を具体案で上司が講じられないお店
- とりあえず店長は出勤することが全て
- 売上UPを人間力や勢いで解決しようとする気風
こういった会社は、今の日本の雇用状況を完全に考慮していない、客観性に欠けるお店といえます。
今のお店で店長になることで本当のスキルやリーダーシップは身につくのか?
よく店長に就任する際に言われる事が、店長で身につくと言われるありがち文句
- 店長になればリーダーシップが育まれる
- 店長になればコミュニケーション能力が上がる
- 店長になれば管理能力が増す
- 店長になれば適応力が身につく
こういった類の話。
どれもこれも仕事をしていく上で役に立つスキルですし、こういった客観的なチカラを身に着けていけば業種を問わずに役立つものばかり。
しかしこれ、ある意味で全てが諸刃の剣の面も備えています。
要は良い面と悪い面が表裏一体になっているので、状況に応じては全てが悪い方向に転換されてしまうのです。
店長になればリーダーシップが育まれる
実際⇒人出不足の昨今、部下そのものがいない。いても外国人
店長になればコミュニケーション能力が上がる
実際⇒シフトを確保するためにバイトをだますようなトークに長けてくる
店長になれば管理能力が増す
実際⇒単純に休日無しへの耐性ができるだけ
店長になれば適応力が身につく
実際⇒飲食業なんて所詮こんなもの。と達観する
通常の職場であれば身につくはずのスキルが、劣悪な環境や状況の中でやり続けていると、自分でも予期せぬ悪い方向へと思考が偏っていってしまう。
結果、ネガティブな発想ばかりが身についていってしまったり、要らぬ耐久力が無駄に身についていくのです。
あなたのお店は本当のリーダーシップが身につくお店ですか?
実録:もっとも悲惨だった店長体験
これは私自身の店長体験です。
とある小型のチェーン店で働いていた時の話し。
店長になることで最も楽しみの一つでもあるのが、「給料」です。
責任のある立場、店舗の統率者であれば当然に然るべきの給料が貰えるだろう。
皆さんと同じようにこんな考えを抱いていました。
休日なし、売上責任のプレッシャーを乗り越えられるのは何といっても末端社員とは給料で差別化がされているからこそだし、ボーナスの期待があるからこそ乗り切れるもの。
そう考えていたのです。
社員時代には総額で25万の給料。
晴れて店長に就任。さあどうなる。
「さあ来い、おれの給料」
こんな意気込みを振りまき、豪快に給料明細の袋をひっちゃぶいたのです。
¥255000
???
¥255000!
¥255000!!
¥255000!!!
我が目を疑うとはまさにこの事でした。
上がった給料なんと5000円!
休日を返上し、誰よりも長くお店にいて、誰よりもお店の売上の事を考え、どうやってシフトを作って、いかに予算を組んで、客うけするイベントを考えて死に物狂いでやってきたのに。
昇給した賃金が5千円です。
新渡戸稲造が一人です。
なんすかこれ。ゲームのポイントじゃないんすよ!?
これ、お店のバックヤードにあるトイレで見てたんですけど、目眩がしてそのままへたり込みましたね。そしてそのまま明細を流しましたよ。
跡形もなく。
現実のものとして受け入れられなかったんでしょうね。当時の自分は。
半端なく大きくやる気を削がれた瞬間でした。
「俺はこの5000円を取りに今まで必死にやっていたのか!?」
こんな疑念にも駆られました。
もう辞めたい・・・
自然と流れるようにこんな感情に行き着きましたね。
ブラックな会社がよくやるマインドコントロール
やはり、店長を辞めたいと思わせる最大の要因は、その環境や待遇の酷さに尽きます。
劣悪な環境にいればいるほど、本来身につくべきはずのスキルが身につかなかったり、考え方のプロセスも悪い方向にいかざるを得ないというのが実態です。
更には、ブラックな会社ほどあなたを閉塞的な環境におとしいれようと工作を施してくるでしょう。
あなたにも可能な限り気付かれぬよう洗脳・マインドコントロールをしてくるのです。
洗脳・マインドコントロールとは強引・強制的に何かをやらせるという事ではありません。
人間誰しもが持っている常識的な心理につけこんで、あたかも自分が決定するかのように選択肢を狭めて追い込んでいく行為です。
ある一定の選択をせざるを得ない。
あなたも気がつけば、選択肢が無い事に、勝手に誘導されていませんか?
「辞めても行くとこはない」
「最低でも3年は働く」
こういったあたかも常識で狭い思考にはまっていませんか?
いや、はめられていませんか?
巷には、全うな業種、全うな会社も沢山あるのです。
最後に
飲食店はかつてない人手不足に追いやられています。
ですが、それが故に、
- スタッフが辞めない工夫
- どこまで仕組み化(労働時間短縮)できるか
こういった部分に尽力している会社も多数あります。
もしあなたが「店長を辞めたい」「今のお店では希望がもてない」というのであれば、一度自分の実力がどれ位試せるのか転職エージェントに相談してみませんか。
今の自分では他で通用しない?
いやいや。全くそんなことはありません。それは今のお店にそう洗脳されているだけです。
あなたのように感性がするどく、今の労働環境を前向きに考えてくれる人材を欲している会社は沢山あります。