長時間労働の飲食業。毎日が15時間勤務の連続だ・・・。
残業代はもちろんつかない。
「俺は店長だから、管理職だからサービス残業は仕方がない」
「飲食店は残業代が出ないのが普通」
このように決めつけてしまっている人は多い。
名ばかり管理職で、実際には単なる雇われ従業員にも関わらず、日本ではサービス残業が普通で皆やっていること。こんな風に考える事が常識になっている。
確かにそうかもしれない。巷では残業代0法案なんてものが見え隠れしているぐらいで、個人の裁量や力量でいかに売上を叩けるかが企業の労働者に対する評価ポイントになるから。
しかし飲食業のような店舗営業の仕事だとお店を開けている時間が決まっています。お店のオープン時間=労働時間になることは多く、仕込み準備の時間がその上に乗ってくる。
人手不足でシフトが組めなければ長時間労働になるのは必須。
店長だから残業代は無しなのか?
いいえ。そんなことはありません。
飲食店でサービス残業代を請求する方法を紹介します!
店長は管理監督者か?
ちょっと難しい話になると、そもそも管理者の法律的な定義って何なのでしょう?
法律上は管理者とは、「管理監督者=経営者と同等の立場にある人」とあります。一体どういう事なのか?
「労務を管理する立場にあり、休日・休憩・労働時間の定めが無い」というのが法的な定義。もっと厳密に言うと、
- 経営者と一体的な立場で仕事をしている
- 出社、退社や勤務時間について厳格な制限を受けていない
- その地位にふさわしい待遇がなされている
とあります。(参照:厚生労働省:労働基準法)
わかりやすく飲食店に当てはめて考えると、
アルバイトの採否や社員の人事異動などの権限をもち、経理・銀行ローンなどの内事を把握して資金繰りを考えて仕事に取り組んでいる。
ランチ営業しているのに悠々と昼の14時に出勤してきて夜のドピークの20時に平然と退社できる。
一般社員と比較しても給料が格段に良い。
以上のような条件を満たして始めて店長=管理監督者となるわけです。
これって???
おそらく上記のような条件を満たせている人は少ないはず。ていうか皆無でしょう。
要は店長は名ばかり管理職ということです。
だいたい店長といっても、アルバイトや社員が行っている店舗オペレーションを一緒にやるのが普通。料理作ったり、トイレ掃除したり。
アルバイトの採否なんかも結局は上長の承認が必要になったりと、全部の決定権を担っているわけではないし、勤務時間も自由に出退勤なんぞいったことは人手不足の飲食業では普通考えられない。
要するに飲食店の店長は管理監督者では無いということです。
管理職でない以上は時間外の労働に対しては残業代が発生するわけです。店長でない一般社員であれば尚更の事。
飲食店社員の本来の給料
大雑把ですが一日13時間拘束で、週6日勤務する店長の本来の給料を算出してみたいと思います。
月給25万と仮定します。交通費や各種手当てはこの中に含みません。基本給とします。
残業代の算出にはまず月間所定労働時間を打ち出す必要があります。会社によっては雇用契約書や就業規則に記されていたりしますが、飲食店などの業態ではあまり社員に知らされていません。
そのため労働基準法にそって算出します。
一週間の法定労働時間は40時間です。一年間は約52週あるので、
40時間×52週=2080時間。これで一年間の法定労働時間が算出できます。
これを12ヶ月で割返せば、2120÷12ヶ月=173
これが月の法定労働時間と仮定できます。まとめると、
52週(1年間の総週数)×40時間(一週間の法定労働時間)÷12ヶ月=173(1ヶ月の所定労働時間)
また所定労働時間が算出されると、基礎時給も算出されます。基礎時給とは簡単にいえば月給制の社員は時給に換算するといくらか?ということです。
給料25万(※手当、交通費含まず)であれば、25万÷173=1445円。これが基礎時給です。社員の。
一日13時間拘束の店長・社員が週6で勤務した場合、休憩時間が1時間あったとして、12時間×26日出勤=312時間
これが月のトータル労働時間になります。所定労働時間の173時間を引くと、139時間の残業をしているわけです。139時間残業です。
残業代には25%増しの割増賃金が乗ってくるので、基礎時給の1445円×1.25=1806円。これが割増時給です。
月の残業時間が139時間なので、139×1806円=251034円。です。
基本給250000円+残業代251034円。これが正規の給料ということになります。
50万です。2倍!
もっと厳密に言えば、休日出勤や深夜割増等の細かいルールがありますがここでは割愛します。
飲食店の店長・社員で月収50万円貰っている人なんているのでしょうか?
サービス残業代を取り返す方法
サービス残業代を会社から取り返すには何と言っても証拠が必要です。
タイムカードがあれば何よりの証拠になりますが、飲食業ではタイムカードを打刻しない場合が多い。
そのため毎日の労働の時間が保持されているものが証拠となる。
例えば、
- パソコンの日報送信時間
⇒退勤時間の証拠 - パソコンのログイン時間
⇒出勤時間 - 日報などのFAX送信時間
- アイパッドやパソコンを使った業者への発注時間
- 社判の押された出勤簿
- 今から帰るなどのラインメール
ざっと上げましたがこんな物でも十分に証拠になりえます。また証拠は詳細であれば詳細であるほど信憑性が増すので、例えば手帳や日記の記載であれば具体的に記されてればいるほど良いです。
びっしりスケジュールで埋まっている手帳なんかは有力になりえます。
- 10時~ランチシフトイン
- 14時~〇〇業者と打ち合わせ
- 17時~夜営業シフトイン
- 23時~帰宅
といった案配です。またここに上司や同僚の個人名などが入って具体的にどんな事をやったのかが記載されていればより信憑性は高まるでしょう。
業者との接点が頻繁にある人は、元気に挨拶などして自分の存在を印象づけておくと良いです。
「いつも朝早くから元気ですね」
などのような記憶付けを作っておけば、あの店長はいつもあの時間に店にいたなという証明にもなります。
お店がセコムやアルソックなどの警備会社に加入している場合は、入退室の記録が残るのでこういったところからも自分がお店に滞在していたことの証拠にもなります。
同様に防犯カメラが店内に設置しあれば、そこに映り込むことで自分がいることの証拠にもなるでしょう。
これらの証拠を固めた上で労働基準監督署に駆け込みます。
しかしながら・・・、
労基署って案外サービス残業代の変換請求に取り扱ってくれなかったりします。従業員の数も少ないので忙しく、よほど解決しそうな件でないと動こうとしない。
「まずは自分で直接会社に請求してみてください」
こんな事をいわれ門前払いされるなんてことも・・・。
弁護士を使って本格的に請求しにいく
もしあなたが残業代の未払いに怒り心頭ならば、弁護士を使って本格的に請求にかかる事をお勧めします。
というのも会社に請求するといっても具体的な残業代の算出や内容証明などの書類を準備したり、自分の持っている証拠が十分なのか分からず不安な要素が多い。
正直なところ具体的にどう動いていいのか分からないのです。
- それでもなんとかしたい
- 今の会社に未練はない
- もう退職してしまったが取り返せるのか?
- とにかく残業代を払って欲しい
こんな方は是非、弁護士に相談しましょう。
残業代変換請求って通常は成功報酬の形をとっている弁護士さんが多い。なので金銭的なリスクも無いのです。
初回相談料無料という弁護士が多いので、とりあえず話しだけでももちかけてみるというスタンスでも全然有りです。
相談するのであれば残業代請求を専門的に取り組んでいる人の方がいいです。分野によっては扱えないという方も多いので、もし、どの弁護士さんに相談していいのか分からないという方は、法テラスという国が設立した法的トラブル解決の総合案内所を利用してみるといいです。
相談したからといって必ず裁判に発展するというわけではありませんので、まずは話を聞いてもらう事から始めてみるといいかもしれません。
残業代を請求するしないに関わらず、もしものために日々の日記や細かいスケジュールを手帳に記入することはお勧めです。